特許明細書作成業務がAIに奪われるかについて

結論から言うと、特許明細書作成業務がAIに奪われることはないでしょう。

特許出願する発明は新規性を有していなければならず、特許明細書作成者は、この新規な発明を詳しく明細書に記載する必要があります。当然ながら、AIが過去のデータをいくら学習しても、この新規な発明については学習できません。そのため、たとえAIに明細書を書かせたとしても、新規な発明部分については内容の薄い、又は全く内容の無い文章になると思われます。これが特許明細書作成業務がAIに奪われない一番の理由です。

もう少し詳しく説明すると、機械系明細書の場合、業務フローは大まかに言うと次の通りです。
発明打ち合わせ→明細書作成(クレーム作成→図面作成→明細書前半部分→明細書後半部分)→納品

機械分野の場合、クライアントから最初に受領する発明資料が紙ぺら1枚で、そこに簡単な図面しか書かれていないことが多いです。そのため、発明打ち合わせでは、クライアントに質問しながら発明を深堀りし、更には発明を広げていくことが求められます。このような業務はAIには不可能でしょう。

クレーム作成は、明細書作成の中でも肝となる業務です。クライアントの将来のビジネスを考慮したクレーム構成にし、適切な用語を選択し、抽象的な発明を明確な文章に落とし込む等の高度なスキルが必要になります。クレーム作成はAIにはほぼ不可能でしょう。

図面作成は作業的な部分が多いため、ラフスケッチさえあればAIの得意分野かもしれません。

明細書本文の作成は、図面を参照しつつ書いていくことになります。熟練した明細書作成者であれば、この段階ではスピーディに仕事が進むでしょう。しかし、決して簡単な作業ではなく、物の構造を明確な文章でいかに記載するか、将来の補正ネタをいかに仕込むか、第三者に分かりやすく説明するにはどの順番で構成を説明していくか等、質の高い明細書にするには考えることがたくさんあります。AIには難しい仕事でしょう。

以上述べましたように、特許明細書作成業務がAIに奪われることはないでしょう。
案件を1件1件丁寧に取り組み、明細書作成のスキルを高めていくことが重要だと思います。